人を撮影するとき

日本で人を撮影するとき:撮影してもいい?投稿してもいい?

これは一般的な情報であって法的助言ではありません。すべての記述は一次資料にリンクしています。2026-10-17に確認。

リンク先の資料と照合したのはこのページの英語版です。この翻訳は英語版に従っています。

肖像権を定めた法律はなく、裁判所が撮影の場所、目的、態様などを総合的に考慮します。街頭の撮影は通常は許容されますが、特定の見知らぬ人を狙って撮影し公開すると、不法行為になることがあります。

公共の場で人を撮影してもいい?

日本には肖像権を定めた法律はありません。肖像権は、民法の不法行為の規定と憲法13条を土台に、判例によって認められてきた権利です。最高裁は1969年、警察官による写真撮影が問題となった事件で、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有すると判断しました(最大判昭和44年12月24日・京都府学連事件)。

ある撮影が違法かどうかは、比較衡量で決まります。2005年の和歌山カレー事件の法廷撮影をめぐる判決で、最高裁は、被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を総合考慮し、人格的利益の侵害が社会生活上受忍すべき限度を超えるかどうかで判断するとしました(最判平成17年11月10日)。場所・目的・態様が考慮されるため、街並みや群衆を広く撮った映像と、見知らぬ一人を狙って撮る場合や、人がそっとしておいてほしいと期待する場所での撮影とでは、評価が大きく変わります。

正当な理由がないのに、ひそかに人の性的な部位や下着を撮影すると、2023年(令和5年)の性的姿態撮影等処罰法により、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金に処せられます(e-Gov、第2条)。

事業として撮影する場合は、個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)が適用されます。個人情報保護委員会は防犯カメラに関するQ&Aで、特定の個人を識別できる画像を取得する事業者は個人情報を取り扱うことになるとしています。そのため、利用目的を特定し、取得の状況から明らかな場合を除いて本人に通知又は公表し、撮影されていることを本人が容易に認識できない場合は、掲示などで認識できるようにしなければなりません(個人情報保護委員会Q&A 1-13、個人情報保護法の条文、英訳)。

投稿してもいい?

公開するとなると、もう一つ別の問題が加わります。2005年の最高裁判決は、自己の容ぼう等を撮影された写真をみだりに公表されない人格的利益も認め、撮影が違法とされる場合には、その写真を公表する行為も違法になるとしました(最判平成17年11月10日)。目安としては、公共の場面にたまたま映り込んだ人ならリスクは低いものの、見知らぬ人を識別できる形でアップにして動画の主役にするなら、同意を求めるべきです。

個人情報保護法は、報道機関(報道を業として行う個人を含む)、著述を業として行う者、宗教団体、政治団体が、それぞれの目的で個人情報等を取り扱う場合を適用除外としています(個人情報保護法第57条)。ただし、この適用除外は個人情報保護法に限った話です。肖像権、プライバシー、名誉毀損に基づく請求は、記者にもVloggerにも及びます。2005年の事件自体、写真週刊誌の出版社を相手取った訴訟でした。

盗撮した性的な画像を人に提供することは、同法の別の罪に当たります(第3条)。同意のない映像については、プラットフォームの規約のほうが法律より厳しいこともあります。

子どもの場合は何が変わる?

子どもの撮影に特化した法律はありません。個人情報保護法で本人の同意が必要となる場面について、個人情報保護委員会は、個別の事案によるものの、一般的には12歳から15歳までの年齢以下の子どもについて、法定代理人等から同意を得る必要があるとしています(個人情報保護委員会Q&A 1-62)。2026年(令和8年)の個人情報保護法改正(令和8年法律第56号)は、16歳未満の者について、同意の取得や通知などを法定代理人に対して行う規律を設けました。改正法は2026年7月17日の公布から2年を超えない範囲内で政令で定める日に施行され(改正法附則第1条)、今回の確認時点では、個人情報保護委員会が政令・規則の内容をまだ検討しています(個人情報保護委員会資料、2026年9月16日)。

性的姿態撮影等処罰法は、正当な理由がないのに13歳未満の者の性的姿態等を撮影すること、また13歳以上16歳未満の者について5歳以上年長の者がその性的姿態等を撮影することを処罰しており、ひそかに撮影したことは要件とされていません(第2条第1項第4号)。保護者の同意がない限り児童生徒をネットに載せないなど、多くの学校が独自のルールを設けていますが、これは学校の方針であって法律ではありません。

私的利用と公開の違い

個人情報保護法の義務を負うのは個人情報取扱事業者、つまり個人情報データベース等を事業の用に供している者です。自分や家族のためだけに撮影する個人には及びません(個人情報保護法第16条第2項)。肖像権はこれと違い、誰に対しても及び、撮影そのものが不法行為になり得ます。2005年の判決は、法廷での隠し撮りを、公表とは別に、撮影行為として違法と判断しました(最判平成17年11月10日)。

公共の場面を撮った動画をスマートフォンに保存しておくだけなら、投稿するよりリスクはずっと低くなります。識別できる人物を動画の主役にして投稿する場合こそ、比較衡量で不利に判断されやすい場面です(最判平成17年11月10日)。

顔をぼかすと何が変わる?

顔をぼかせば、最も大きな識別の手がかりはなくなります。個人情報保護委員会は、性別や年齢といった属性情報や、人物を全身のシルエット画像等に置き換えて作成した人流データについて、抽出元のカメラ画像などと容易に照合できる場合を除き、個人情報に該当しないとしています(個人情報保護委員会Q&A 1-12)。ただし、ぼかした顔そのものについて同じことを述べているわけではありません。個人情報保護法の匿名加工情報の基準はさらに厳しく、特定の個人を識別できないように加工し、かつ元の個人情報を復元できないようにする必要があります(個人情報保護委員会「仮名加工情報・匿名加工情報編」ガイドライン)。

肖像権が守るのは人の容ぼう・姿態なので、実際に問われるのは、見た人がその人物だと分かるかどうかです(最判平成17年11月10日)。顔をぼかしても、声、画面に出る名前、タトゥー、制服、特定できる場所などから本人が分かることはあるので、ぼかしはリスクを下げるものの、なくすわけではありません。また、性的姿態撮影等処罰法の撮影罪は撮影した時点で成立するため、ぼかしても何も変わりません(第2条)。

法律がはっきりしていない点

路上でのVlog撮影や、見知らぬ人をSNSに投稿することについての最高裁判決は見当たりません。裁判所は2005年の比較衡量の基準を事案ごとに当てはめており(最判平成17年11月10日)、収益化したチャンネルにとっての受忍限度がどこにあるかは定まっていません。チャンネルで収入を得ているクリエイターが個人情報保護法上の個人情報取扱事業者に当たるかどうかは、事実関係によります(個人情報保護法第16条第2項)。16歳未満に関する2026年改正の規律は成立していますが、施行日や細部はまだ決まっていません(改正法)。

出典

撮影地のルールがどうであれ、同意を得ていない人の顔をぼかしてから投稿するのが、いちばん簡単に安全側に立つ方法です。Anonimoなら動画をアップロードせずに、iPhone上でそれができます。

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